介護職の「医療行為」できることできないこと・注意点を解説!!

医療・健康

介護職の医療行為は、法律によって「できること・できないこと」が決められています。もしも介護職がしてはいけない医療行為を行うと、ご利用者様の命を左右する事態になったり、最悪の場合、違反行為として書類送検されたりする場合も。 「医療行為」について、何ができて何ができないのか、正しい最新情報を確認し、適切な判断や対応ができるようにしておきましょう。本記事では詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

医療行為とは?医療的ケアとの違いについて

「医療行為」と「医療的ケア」は、言葉は似ていますが意味が異なります。 2つの違いをご説明します。

医療行為とは?

医療行為(医行為)とは、傷や病気の診断・治療、または予防のために、医学に基づいて行われる行為のことです。 医療行為を行うことにより人体に危害を与える可能性があるため、医師や看護師などの医療資格者のみに認められています。

医療的ケアとは?

医療的ケアとは、自宅で家族などによって日常的・継続的に行われている医療的行為をさします。 介護現場でのケアが医療行為であるかどうか、また介護職が行ってもよい行為かどうかの判断が難しかったため、2005年(平成17年)に、厚生労働省が「医行為でない行為」を明示をしています。 具体的な医療的ケアについては、後ほど詳しくお伝えしようと思います。

介護職ができる医療行為

高齢人口の増加や、介護人材の確保を背景として、2011年(平成23年)に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が成立。 これにより、資格を取得したり研修を受けたりするなど、一定の条件を満たした上で、「たんの吸引」と「経管栄養」の特定医療行為を介護職が実施できるようになりました。 介護職ができるたんの吸引と経管栄養については、以下のとおりです。

◆たんの吸引

たんの吸引とは、のどの奥にたまったたんを、口腔内・鼻腔内などからチューブを使って吸い取り、呼吸を楽にすることです。 自力でたんを吐き出せない方が呼吸困難や窒息などになるのを防ぐために行います。 介護職が実施できるたんの吸引は、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の吸引です。

◆経管栄養 経管栄養とは

口から食事を摂ることが難しい、あるいは誤嚥の危険性が高い場合に、鼻・胃・腸に挿入したチューブから流動食や栄養剤を送り、栄養補給する方法のことです。 介護職が実施できる経管栄養は、「経鼻経管栄養」「胃ろう」「腸ろう」の3種類です。 介護職ができない医療行為 介護職ができない医療行為として、次が挙げられます。 眼軟膏 経皮吸収型製剤 吸入薬の介助 褥瘡の処置 摘便 インスリン注射 血糖値測定

介護職ができる医療的ケア

◆介護職ができる医療的ケアとして、以下が挙げられます。

◆水銀体温計・電子体温計・耳式電子体温計で体温を測定すること

◆自動血圧測定器で血圧を測定すること

◆入院治療の必要がないご利用者様に、動脈血酸素飽和度を測定するためにパルスオキシメータを装着すること

◆軽い切り傷や擦り傷、やけどなど、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること(ガーゼの交換など)

以下の行為も、原則として規制の対象とする必要がないものとされています。

●爪切りで爪を切ったり爪ヤスリでやすりをかけたりすること(爪そのものや周囲に化膿や炎症などの異常がない場合)

●歯ブラシや綿棒などを使って、歯・口腔粘膜・舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること(重度の歯周病などがない場合)

●耳掃除をして耳垢を取り除くこと(耳垢塞栓の除去を除く)

●ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること(肌に接着したパウチの取り替えを除く)

●自己導尿を補助するための、カテーテルの準備や体位の保持などを行うこと

市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器で浣腸すること

以上の行為は、病状が不安定であるなど専門的な管理が必要な場合には、医療行為とされることもあります。 そのため、状況に応じて、医師や歯科医師、看護職員に、専門的な管理が必要かどうかを確認する必要があります。 また、病状が急変した場合は速やかに連絡をとり、指示を仰いで必要な措置を行いましょう。

介護職が状況に応じてできる医療的ケア

以下の場合、介護職が医療的ケアとして医薬品を使用することが認められています。

◆ご利用者様の容態が安定している

◆医薬品の使用に専門的な配慮が必要ないことを、医師や看護師が確認し、事前に本人や家族にも伝えている

◆医師や看護師の指導の上で行う

具体的には、以下の行為です。

●皮膚への軟膏の塗布(祷瘡の処置を除く)

●皮膚への湿布の貼付

●点眼薬の点眼

●一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)

●肛門からの坐薬挿入

●鼻腔粘膜への薬剤噴霧

介護職が医療行為や医療的ケアを行う際に気をつけるポイント

介護職が、医療行為や医療的ケアを行う際に、気をつけるポイントをまとめてみました。

医療についての知識を身につけておく

介護の中で行う医療行為・医療的ケアには、ご利用者様の命に関わるもの、健康を維持するために必要なものなど、さまざまな種類があります。 介護職においても、関連する医療知識を身につけておくことが必要です。

丁寧に観察をし、小さな異変に気づく

医療行為や医療的ケアを行う際は、小さな異変にも気づけるよう、ご利用者様の顔色や呼吸、脈拍など、普段の様子と変わったことがないかどうか、細心の注意をはらいましょう。 何か異常があった場合は、迅速に医療機関などに連絡できる体制を整えておく必要があります。

医師や看護師との連携を密にする

高齢者は、少しのことでも体調を崩しやすかったり、体力や免疫力の低下により、さまざまな感染症を起こしやすかったりします。 医療的ケアを行う際に、発熱や血圧などいつもと違う様子が見られるようであれば、医師や看護師に報告し、指示を受けましょう。

感染予防対策をしっかりする

感染予防対策として、介護をする際は手を清潔にするように心がけます。嘔吐物や汚物の処理をするときは、個人防護具を着用するようにしましょう。 石鹸と流水での手洗いの基本をしっかりと行い、速乾性アルコール製剤での手指消毒を行って人から人への感染を予防します。 防護具は、つけ方や外し方が間違っていると予防効果がありません。正しい着脱や処理方法を覚えましょう。

注意!!介護職が違反の医療行為を行うと書類送検されることも

過去には、介護職が違反の医療行為を行って書類送検された事例もあります。 医療行為かどうか迷ったときや、家族などから求められたときなどの対策をご紹介しますので、参考にしてください。

しかこれって違反行為?と迷ったときは

介護をしている際、「これは医療行為なのでは?」と迷ったときは、必ず医師や看護師など、専門的な知識を持つスタッフに相談しましょう。 前述した医療行為を、介護職が行うことはできません。

違反の医療行為を求められたときは

ご利用者様の家族から違反の医療行為を求められたときは、違法であることを丁寧に説明し、はっきりと断りましょう。その際は断るだけでなく、医師や看護師と連携を取り、対応を伝えることで、ご家族やご利用者様に安心していただけます。 施設から求められたときは、上司や同僚が違法であることを知らない場合もあります。 法律で認められていないことを伝え、今後も同じことがおこらないよう、職場内で周知してもらうなどの対策を依頼しましょう。

知識を身につけて安心して任せられる介護職に

介護の現場における医療行為のニーズは、年々高まっています。 介護職は、今後さらに介護や医療についての知識を身につけ、専門性を高めていく必要があります。また介護職として、できることとできないことを認識しておくことも大切です。 安全性の確保をし、医療職と連携をしながら、ご利用者様にとって、より安心していただける介護をしていきましょう。

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